2008年04月02日

Dream tiket -1-

ーliveまであと少しー


6時間目ー数学
いつもより長い50分を過ごしている
当然頭の中では何の計算もされていない。
財布からシワシワのチケットを取り出しす。

「B-16」

もう何十回目かの座席確認。
ノートに落書き。
キースの似顔絵、名前、ロゴ、勝手な妄想、セリフ。


ーもうすぐ逢えるんだー


ふと隣の席を見ると、何か忙しそうに書き込んでいる佐久間と目が合う。

「マジタルくねー?」

タルくねー?は佐久間の口癖だ。
正直そこまでタルくはないが話を合わせる。

「タリーな。はやく終わんねーかな」

そう言いながら佐久間のノートを覗くと、
同じような事を書き込んでいるが明らかに自分より絵が上手い。

「...」

無言で自分の絵を書き直しながらチャイムを待った。


ーliveまであと少しー


その日、朝一番の電車に乗って渋谷で佐久間と待ち合わせた。
一週間前の電話先行予約で「キース」のliveチケットを取り逃がした為、発売日の今日、死んでも店頭で買わなければならないからだ。

東急文化会館前に着いたが、佐久間はまだ着いてないようだ。
まだ人影が少ない駅をぼんやり見ながらキャスターマイルドをふかしている。
まだ眠いせいもあってとにかく寒い。
普段はあまり買わない缶コーヒーで体をあたためながら佐久間を待つ。

「わりーわりー」

「あ?おせーよ」

「だからわーりって」

「あー。まー早く行こうぜ」

「つか、タルくね?」


歩いて15分程の所にあるチケットセンターを目指した。


佐久間は楽器は弾けないが、音楽にはとにかく詳しい。
キースを修学旅行の行きのバスで聞かしてくれたのも、その後熱狂的なファンになりliveに必ず一緒に行くのも佐久間だった。

自分の父親の職業をエロ本の密輸業者ではないか?と本気で疑っている、
少し変わった奴だがウマが合う奴だ。



チケットセンターに近づく。
うっすら見える人影。

「あれ何だ?」

「並んでる人の列??」

不安で締め付けられながら、駆け足で近寄る

「ちょっ、やべーよ」

「一番ケツどこよ!!」

「マジ!?ここからかよ?!」


列を辿り、最後尾にしょうがなく並んだ。

「どうしよう..」

「待つしかないだろ..」

「...」

活気あふれる人の列の中、佐久間の持って来たCDウオークマンのヘッドホンを片方ずつハメて、1stAlbum「キース」を繰り返し鳴らす。
缶コーヒー計5本、タバコ2/3箱を消費したところで、メガホンを片手に持ったまるで緊張感のない兄ちゃんが登場。

「えー、只今より整理券を配布します。この券と引き換えに10時よりチケット販売致します。
整理券枚数には限りがありますのでご了承ください。」

自分達の前に並ぶ人数を見て絶望する。

「カミサマ!ドウカxxxテクダサイ!!」



祈りも虚しく20m先で配布終了。
容赦無く配布終了。
配布終了....

「...」

「.....」


しばらくすると、少しずつ人影は減っていった。
僕達はプランBを必死で考え続けたが、何も浮かばないままひたすらタバコをふかしていた。
このままあと5分も沈黙が続けば、間違いなくそこら辺の少年をブン殴ってチケットを奪っていただろう。

「よっ!お前らも来てたんか」

「あ?」

「おっ!たーちゃん!」


声の主はたーちゃん。
中学までは一緒だったが今は隣の学校に通ってるバンドマンだ。
当時流行のワンレン長髪だが、かきあげ過ぎるのでちょっとウザイ。


「たーちゃんどーだった?」

「どうって、なにが?」

「整理券だよ!この状況で大学入試の話すっかよ!」

「貰ったに決まってんじゃん。ん?お前ら貰えなかったん?」

「ッパネーよ。朝一で来てんのにアリエナクね?」

「そっかー。じゃ分けてやろっか」

「...??。イ、イマ、ナントオッシャイマシタカ?」

「だから、整理券一枚でチケット二枚買えんじゃん。オレ、連れと来てるから分けてやろっかって」

佐久間、俺「たーちゃん!...さん!!」




佐久間は凄く喜んでいた。
「liveに行けないならもう死のうかと思った」とさえ言っていた。

その後、彼の言葉は多少入れ替わって
「死んでしまってliveに行けない人」になってしまった。



あの頃僕達は音楽の夢の中にいた。
全てはそこに繋がっていて、その為に全ては動いていた。
自分でも止められない程のめり込んで行く事に身をまかせていた。
誰かの説教も、警察の怒鳴り声も届かない。

ヘッドホンから聞こえる爆音で、周りの音なんか聞こえなかったから。


ーliveまであと少しー






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posted by macaroni☆ at 10:36 | TrackBack(0) | Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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